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2010-03-11

独礼と大石寺

江戸時代の寺格制度の中で、「独礼(どくれい)格というのがあります。独礼寺とか、独礼席を許されるという使い方をするようです。

私が、自分の御朱印サイトで御府内八十八ヶ所を取り上げたとき、江戸時代の札所を知るために、谷中の49番多宝院が開版したガイドブック『御府内八十八ヶ所大意』を調べました。そこで「独礼」という格式があることを知ったのです。

「独礼」という名前からして、たぶん、将軍への拝謁に関わる格式だろうとは想像できましたが、念のためにネットで調べてみました。そして、独礼の内容はほぼわかったのですが、その過程で、日蓮正宗の総本山・大石寺の独礼席の許可に関わる、日蓮正宗の人たちの興味深い誤解と妄想が存在していることを知りました。

日蓮正宗といえば法華系の伝統宗派ですが、破門した元信徒である創価学会や顕正会と、三つ巴の見苦しい争いを続けている恥ずかしい教団です。本人たちは大まじめにやっているのでしょうが、第三者から見ると、身内で恥のさらし合いをしているようにしか見えません。

言ってみれば、父親と、家出した金持ちの息子と、勘当された元気のいい息子が、他人様の前で身内の恥をばらし合ったり、ストーカーみたいなことをして警察に捕まったりしているようなものですが、ご近所の皆さんは、金持ちの息子ににらまれると厄介なので、関わり合いにならないよう見て見ぬふりをしている状態といえるでしょう。

まあ、一番迷惑を被っているのは日蓮聖人と日興上人でしょうね。「宗論はどちらが負けても釈迦の恥」といいますが、この三派の争いは、していることが祖師の恥ですから…

それはさておき、独礼の問題です。

いくつかの日蓮正宗の寺院や信徒のサイトに、宝永7年(1710)1月6日に天英院(六代将軍・徳川家宣の正室)の配慮により、大石寺(日蓮正宗の総本山)が独礼席を許され、御礼を申し上げたということが取り上げられています。

それはそれでいいのですが、その独礼について、将軍と一対一で面会することができるとか、当時は僧侶の独礼席が途絶えていたのに破格の扱いを受けたとかという書き方がされ、いかにも大石寺が幕府から特別扱いをされていたかのように考えている節が伺えます。

このように妄想をたくましくして、自身を客観的に観る目を失うのが「困った宗教」の特徴です。まあ、他人に迷惑をかけないのなら、どれほど妄想をたくましくしてもいいのですが、この宗派の人たちは、自分たちだけが正しい宗教だと信じて他宗教を誹謗罵倒するという困った性質があり、自分たちを尊しとする妄想が誹謗罵倒のエネルギー源になるようでは世の中の迷惑です。

そこで、独礼がどういうものかを調べ、正しい知識によって妄想の霧を吹き払っておきたいと思います。

まず、独礼とはどういうものか。ネット上に僧侶の独礼のあり方について説明したものはありませんが、独礼そのものについては説明がありますので、徳川将軍家と大奥のブログさんと孫エムだよりさんなどを参考に、どういうものか整理してみます。

それによりますと、1月1日から3日まで、諸大名や旗本などが将軍に年始の御礼言上をするのですが、四位以上は白書院で独礼、五位以下は大広間で立礼で拝謁することになっていました。

四位以上の大名というのは、だいたい石高が十万石以上あるか、御連枝クラスの親藩ですから、かなり格が高いといえます。

で、独礼とはどのようなものかというと…

将軍は上段ノ間に着座し、下段に控えた拝謁者から一人ひとり挨拶を受けるのですが、奏者番が拝謁者を披露し、老中が将軍に向かって「何の守、御年始御礼申し上げます」というと、拝謁者は平伏し、それに対して将軍が「目出度い」と答えるというものだったそうです。

因みに、立礼は大広間で、将軍は下段之間に立ち、二の間・三の間に平伏する拝謁者の挨拶をまとめて受けるというものだったようです。

そして、1月6日に寺社の御礼、つまり年始の挨拶があり、主だった寺の住職や神社の神主・別当が江戸城で将軍に拝謁しました。各宗派の本山や触頭、将軍家の祈願所、その他徳川家とゆかりの深い寺院など、あるいは伊勢神宮や石清水八幡宮、出雲大社をはじめとする有力な神社などが独礼席を認められていましたが、上記の内容から見て、大名と同じような形式だったと思われます。

ですから、大石寺が独礼席を許され、宝永7年1月6日に御礼を申し上げたというのは、他の同格の寺社の住職や神主と一緒に、独礼の形式でもって年始の挨拶をしたというだけのことです。一対一で面会をしたとか、独礼席を許されたことに対する御礼を言ったというようなことではありません。

このことがわかると、日蓮正宗の人たちがこの出来事について想像しているような意味とはまったく違う現実が見えてきます。

例えば、日蓮正宗仏乗寺のサイト(http://www.butujoji.jp/houwa/houwa2003ek.html)には、堀山城守正勝の書状を引用しています。
この中に「兼ねて願い上げられ候今六日独礼の席に於て御礼申し上げ度きの旨、数年中絶致し寺社奉行衆取り上げ申されず云々」という文言があるのですが、これについて、独礼席は事実上廃止されていたが、天英院の強い希望により、大石寺に限って独礼席が復活した、これに寺社奉行が困惑した様子が記されている、というような解釈をしています。
しかし、これはきちんと読めばわかるように、別に寺社の独礼が廃止されていたのではなく、独礼での年始の挨拶をしたいという大石寺の希望について、寺社奉行はまったく取り上げていなかったが、天英院の強い希望によって認められたということです。

また、これが破格かということになりますと、特別待遇であることは間違いありませんが、驚くようなことというわけでもありません。

例えばネットで簡単に検索しても、日蓮宗なら身延山末の触頭であった瑞輪寺や善立寺、あるいは浅草にあった(現在は世田谷区に移転)幸龍寺などが独礼を許されていたことがわかります。また、日蓮宗の大本山である清澄寺は、当時は真言宗の寺でしたが、やはり独礼格です。有名な大寺院には、わざわざ独礼であったことに触れていないところも少なくありませんので、どれぐらいの数があったかはちょっとわかりません。特別に珍しいというわけでもないと思われます。

因みに、私が独礼について調べるきっかけになった御府内八十八ヶ所でいいますと、江戸時代の札所では88ヶ寺中16ヶ寺が独礼を許されていたようです。参考までに掲載しておきます。文化13年(1816)の資料ですから、宝永7年から約百年後になりますが、それでも雰囲気はわかるだろうと思います。

1番 高野寺・高野山金剛峯寺学侶方在番所(高野三方の一・学侶方の江戸出張所。港区高輪。現在の高野山東京別院
12番 明王山宝仙寺(中野区中央)
16番 亀頂山三宝寺(練馬区石神井台)
19番 愛宕山円福寺(愛宕神社の別当で新義真言宗触頭四ヶ寺の一。現在は廃寺)
23番 稲荷山薬王寺(現在は廃寺。市谷薬王寺町の名が残る)
28番 宝林山霊雲寺(文京区湯島。関東の真言律宗の総本山・触頭。現在は真言宗霊雲寺派の総本山)
30番 光松山放生会寺(現在の放生寺。新宿区西早稲田。穴八幡宮の別当で、将軍家の祈願所)
32番 万松山円満寺(文京区湯島)
35番 金剛宝山根生院(新義真言宗触頭四ヶ寺の一。湯島から豊島区高田に移転)
45番 雄徳山大護院(五代将軍・徳川綱吉が京都の石清水八幡宮から勧請した蔵前の石清水八幡宮=現・蔵前神社の別当。現在は廃寺)
46番 万徳山弥勒寺(墨田区立川。新義真言宗触頭四ヶ寺の一)
50番 御宮別当大徳院(墨田区両国。高野三方・聖方の本寺である大徳院の江戸出張所であった)
67番 摩尼珠山真福寺(港区愛宕。新義真言宗触頭四ヶ寺の一)
68番 大栄山永代寺(富岡八幡宮の別当で、現在の深川不動堂のあたりにあった。明治に廃寺となり、現在は旧塔頭の吉祥院が法灯を継いで永代寺を称している)
87番 神齢山護国寺(文京区大塚。現在は真言宗豊山派の大本山)
88番 高野寺・高野山行人方在番所(高野三方の一・行人方の江戸出張所。元は白金にあったが、現在は杉並区和泉に移転し、文殊院と称する)

つまり、宝永7年に独礼が認められたというのは、こういったクラスの寺院と同格の扱いをしてほしいと寺社奉行に願い出ていたけれども相手にされなかった。しかし、天英院の配慮により認められたという話です。

とはいえ、問題は独礼云々にあるのではなく、インターネットでちょっと調べればわかるようなことについてきちんと調べることもせず、自分たちの知っている情報と願望によって妄想を膨らませるところにあります。

これは日蓮正宗の人ばかりでなく、日蓮正宗と争っている人たちを含めた、世の中の困った宗教の人たちに共通する習性だろうと思います。

熱心に他宗教の批判をするよりも、まずは自分たちのやっていることを顧みるほうがいいのではないかと思うわけです。

心神(わがたましい)を傷ましむること莫れ。ありがとうございます。

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