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2010-03-30

桃水雲渓(4)

桃水雲渓(3)

桃水雲渓(とうすい うんけい)禅師が京で乞食に混じって生活していた時期については、二つほど逸話が残っています。

桃水には三人の得度の弟子がいましたが、そのうちの琛洲と智伝という二人が、桃水を追って大阪にまで出て来ました。毎日手分けをして探しましたが、どこにも師の姿はありません。

来る日も来る日も師を求めて歩き回っていたある9月の日、二人は京の東山を歩いていました。そして清水寺の下の安井門跡(蓮華光院、現在の安井金比羅宮)のあたりに来たとき、大勢の乞食が集まっている群れの中に、師匠である桃水の姿を見つけました。

その姿は、髪も髭も伸び放題、着ているものといえばボロが肩の辺りに引っかかっているだけで、背中には菰(こも=むしろ)を背負っています。右手には破れ椀、左手には破れた袋を持って、みんなと談笑しているのでした。

二人は師匠を捜し当てた喜びと、変わり果てた師匠の姿に言葉もなく、師匠の前にぬかずいて涙を流すばかりでした。

桃水は二人を見ると、冷たく言いました。

「今すぐ、どこにでも行くがいい。ここにお前たちが来ても、何の用もないところじゃ。生きている間に会う必要はないだろう」

そして、さっさと東山のほうに歩いて行きました。

二人は桃水を追いかけました。琛洲が呼びかけて言うには、「私は、お師匠様のところを離れて他に行こうとは思いません。お師匠様にお仕えし、御一生を見届けたいと思います。どうか、おそばに置いてください」

しかし、桃水は振り向きもせず、「無用じゃ。無用じゃ」と言って、さらに足を速めます。

それでも二人は必死に師匠を追いかけます。そうして山の中にさしかかったとき、突然桃水は後ろを振り向き、「お前たちに『無用じゃ』と言ったのは、今や、わしとお前たちとでは境界が違うからじゃ。もし、お前たちが無理についてきたとしても、それほどしないうちに飽きがきて、自分から身を引くことになるだろう。無理に伴をしようなどとはせず、早う帰れ」と言いました。

智伝はこれを聞いて感じるところがあったらしく、師についていくことを諦めたのですが、琛洲は涙ながらにお供を懇願します。

これには桃水も根負けして、「しかたのない奴じゃ。それなら、好きなようにすればよいだろう。まあ、十日も保たないとは思うが、その時になればわかるだろう」と言いました。

そして、琛洲の袈裟や衣、道具を全部取り上げると、そばにあった乞食小屋に持ち込み、かわりに菰を持ち出してきて背負わせました。

そして、「わしは江州(近江…滋賀県のこと)のほうに用がある。日が暮れてしまわないうちに行かねばならない」と言いました。

二人は大津に出て、坂本に向かう途中に日が暮れたので、林の中にある祠に菰を敷き、そこで一夜を過ごしました。

その夜、琛洲は桃水が次のような偈(詩)を吟じるのを聞きました。

『如是生涯是寛、弊衣破椀也閑々、飢餐渇飲只吾識、世上是非総不干』

漢詩はどうも苦手なのですが、「このような生涯はゆったりしている。すり切れた着物や破れ椀というのものどかなものだ。腹が減れば食べ、のどが渇けば飲むということだけを自分は知っている。世間の評価などは知ったことではない」というような意味になるのでしょうか。

ここまでの中でのポイントは「境界が違う」という桃水の言葉だろうと思います。住む世界が違うということでもあり、求める世界が違うと言うことでもあるでしょう。

弟子たち、特に琛洲は、一生そばに仕えたいという言葉からもわかるように、普通の僧侶としての価値観に基づいて、その修行を全うしたいと考えているのに対して、桃水はもはや僧侶という枠組みを離れています。

もちろん、二人とも禅者ですから、求めるものはとらわれのない境地と言うことになるのでしょうが、弟子たちが想定しているのは「禅僧という枠組みの中での」とらわれのない境地であるのにたいし、桃水は禅僧(あるいは僧侶)という枠組みにさえとらわれない立場で、絶対的な自由の境地を目指していたのだといえるでしょう。

さて、二人はどうなるでしょうか。

心神(わがたましい)を傷ましむること莫れ。ありがとうございます。

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