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2010-04-06

桃水雲渓(8)

桃水雲渓(7)

桃水雲渓(とうすい うんけい)禅師の大津時代については、もう一つの逸話が残っています。

桃水と同じく囲巌宗鉄(いがん そうてつ)禅師の弟子で、桃水の法弟になる行巌雲歩(こうがん うんぽ)禅師という方がいました。肥後の出身で、江戸で鈴木正三にも師事しています。

生涯、絹布を身につけなかったといいますから、名利に惑わされない立派な方だったのだろうと思います。豊後国高田(現在の大分市)に能仁寺を開いて教化に努め、多くのキリシタンを改宗させたそうです(豊後では、キリシタン大名の大友宗麟が神社仏閣の焼き討ちなど宗教迫害をした過去がありました)

肥後熊本藩主・細川綱利は雲歩和尚を非常に尊崇し、参勤交代で江戸にあるときも、わざわざ呼び寄せて聞法をしていたといいます。

この話も、雲歩はお伴の僧を4、5人連れて江戸に赴く途中の出来事だったそうです。

大津の宿に着いたところで、人足たちは休憩のため、雲歩の乗った駕籠を下ろし、茶店で一服していました。

そこへ、一人の白髪頭の老人が馬沓を背負って歩いてきました。すると、まわりにいた馬子たちが、待ち構えていたかのように「爺さん、二束くれ」などと次々に呼びかけ、馬沓を買い求めるのでした。

雲歩は駕籠の中からその老人を見ていたのですが、どうも法兄の桃水に似ているような気がします。それで、さらによく気をつけて観察していたのですが、その姿はやつれ果てていますが、やはり間違いなく桃水のようです。そういえば、京都で乞食をしているという噂も聞いていました。

そこで、気づかれて逃げられるといけないと思い、急いで駕籠を降りると、そっと近づき、手を取って「桃水和尚ではありませんか」と尋ねました。

すると、桃水はさして驚いた様子も見せず、「おお、雲歩か。貴殿はどちらに行くところかな?」と言いました。

「私は細川候に招かれ、江戸に参るところです。思いがけないところでお目にかかることができ、なによりです」雲歩はそういうと、桃水の手を握りしめて離そうとせず、涙を流して喜びました。

桃水は「ご覧の通りの姿だが、別に恥ずかしいこともない。まあ、二度と貴殿と会うこともないだろう。長寿で御身を大切になされよ。とはいえ、主持ちと同じだから、勤め方は大事にされよ」というと、すがる雲歩を振り払うようにして立ち去りました。

それを見ていた大津の人たちは、それまで「爺、爺」と呼んできた馬沓売りの爺さんが、実は偉い人だったらしいと初めて知りました。それで、宿場の大商人などが一目お目にかかりたいということでやってきたりするようになりました。

そもそもそういうことが嫌な桃水は、二日もしないうちに、またもどこかへ姿をくらましてしまったそうです。

雲歩禅師という方は、桃水が消えてしまった例の禅林寺での冬安居にも参加していたそうですから、桃水のことを非常に敬愛していたものと思われます。気づかれると逃げられるかもしれない、と思ったのは、桃水の性格をよく知っていたからだと思われます。

また、桃水も雲歩に対しては、自分の心が通じる相手として認めていたのではないでしょうか。

この出会いで、特に印象深いのは、雲歩に対して、主君持ちでお勤めが大変だろうが云々というところです。桃水自身は主君持ち(禅林寺の住職は主君持ちと同じです)を投げ捨ててきているわけですが、決してそれを強制したり、相手の生き方を否定していません。

私は思うのですが、師匠と弟子という関係は別として、宗教においては、たとえ信者であったとしても、それぞれの生き方については相互に不干渉であることを基本にすべきではないでしょうか。

まあ、不干渉というのは不適切かもしれませんが、相手の生き方を尊重し、自らの価値観を強制するべきではないと思います。信者は弟子ではありませんしは違いますし、弟子であっても、やはり別の人格を持っているわけです。

しかし、特に新宗教においては、そこのところを誤解して、往々にして信者を所有物のように錯覚している傾向が見受けられます。あるいは、信者もそういう傾向に汚染されて、他人に自分たちの価値観を押しつけたりしています。

そこに執着があり、仏教的にいえば苦の原因となるわけで、自分は自分、相手は相手の人生という明確な線引きの上に、相手の立場に立ったアドバイスというか、思いやりのある言葉を発する桃水の姿に、宗教者とはかくあるべきではないかという感を深くします。

心神(わがたましい)を傷ましむること莫れ。ありがとうございます。

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