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2009-12-26

『なぜ正直者は得をするのか』藤井聡著

因果応報について突き詰めていけば、「正直の頭に神宿る」というように、目先の損得のために人を騙したり約束やルールを破ったりするより正直に振る舞ったほうがよいということになります。

このことを誰もが納得できる形で明確に示すことができれば、他人を犠牲にして自分ばかりがいい目をしようなどということが減り、住みやすい世の中になるだろうと思われます。

それで私も試みとして因果応報について論じているわけですが、先日、書店に行って、ちょうどそういうテーマの本がありましたので、参考までに読んでみることにしました。

『なぜ正直者は得をするのか -「損」と「得」のジレンマ』藤井聡著(幻冬舎新書)

著者の藤井聡氏は京都大学大学院工学研究科の教授です。

藤井教授は「損得勘定に基づいていろいろな選択や判断を行うという、自分勝手で、自己中心的な考え方」「利己主義」とし、この利己主義の特徴と、それが導く結果を見ていくことにより、次のような結論が示唆されるとします。

「すなわち、“得”をするのは利己主義者ではなくむしろ正直者なのであり、利己主義は最終的には“敗北”せざるをえないのだ」

これを見て、残念ながら、藤井教授の試みは失敗するだろうと思いましたが、まあ、どういう結論になるか参考までに読んでみようと思い、購入しました。

で、結論は…

著者自身が、自分が本書を書いた意図に対して「その目的をどこまで果たせたのか、甚だ心許ないところではある」と書いているように、まあ、失敗と言わざるを得ないでしょう。

というのも、著者が示すことができたのは「利己主義者は遅かれ早かれ確実に敗北する」のに対し、「非利己主義者は『確実に敗北する』とは限らない」というところまでで、「正直者が得をする」と断言するには至ってないからです。

「利己主義者には“勝利”する希望が理論的に残されていない一方で、非利己主義的な“正直者には勝利する希望が常に残されている”のである」とは言うのですが、利己主義者が滅びる前にしばしば正直者が滅ぼされている、あるいは利用され犠牲になっているという現実の前には、あまり慰めにはなりませんし、説得力もありません。

ですから、著者自身が「幸せになるのだから、正直者として生きていくことにした、と決めるようなことは、ナンセンスな考え」だと言わざるをえないわけです。正直に生きて得をするのなら、なぜ正直に生きていくことを決めるのがナンセンスな考えなどということになるのでしょうか?

明らかに、著者自身が「正直者が得をする」とは信じ切れていないし、説得力のある説明になっていないことを自覚していると思わざるをえません。

失敗の原因はごく単純で、「利己主義者」と「正直者」「非利己主義者」を対置させたところにあります。

著者も、人間の非利己的な行為の底に、しばしば利己的な意図があることを指摘しています。しかし、その上で、人間は純然たる利己的行動ばかりをとるわけではない、人間は利己主義者ではない、と躍起になって論証しようとします。

それが間違いのもとなのです。

そもそも本書のタイトルが示しているように、正直者が得をするというのは、正直に振る舞うほうが己れを利するという損得勘定が成り立つということです。目先の損得勘定で動こうと、最終的に得をすることを期待して正直に振る舞おうと、自分を利することを選んでいることには違いありません。つまり、どちらも利己主義なのです。

あるいは、職人などに結構いたりしますが、自分の仕事の代金に利益を乗せることをいやがる人がいます。これなど、典型的に「非利己主義」的な行動ですが、それが得につながることなど、まずありません。それで満足していればいいでしょうが、しばしば正直に生きている自分が報われないのはおかしいと思っていたりします。

つまり、利己主義者であることは決して悪ではなく、必要なことなのです。

ただ、何が違うかというと、それが目先の損得にとらわれた「愚かな利己主義」か、先々まで見据えた「賢明な利己主義」かというだけのことです。

これは逆も真なりで、正直についても「愚かな正直」「賢明な正直」があります。嘘や賄賂は善くないものですが、それで人が救われたり、問題がスムーズに解決することもあります。それを正直がいいからといって、いちいちあからさまにしたりすると、かえって問題がこんがらがったり、エスカレートして収拾不可能になったりします。

結局、問題は「賢明」か「愚か」かというところで、利己主義者か正直者かではありませんし、非利己主義者など論外です。

藤井教授の想定している「利己主義者」は「愚かな利己主義者」ですから、遅かれ早かれ滅びるのは当然のことです。また、正直者については「賢明な正直者」と「愚かな正直者」の区別がつけず、どちらかというと「愚かな正直者」を想定しているために、正直に生きると決めるのはナンセンスな考え、などということになるわけです。

ここまで来れば言うまでもないことですが、「賢明な利己主義者」と「賢明な正直者」はほぼ重なります。ですから、(賢明な)正直者は得をする」のも当然のことといえるでしょう。

※なお、正直者には、一見すると「愚かな正直者」に見える「本物の正直者」がいます。これらの人々は自分が正直かどうかさえ気にかけない人々です。この人たちこそ「正直の頭に神宿る」という時の正直者で、「賢明な正直者」というのは「本物の正直者」の真似をしているに過ぎません。

「利己主義=悪」という常識に引きずられ、その視点から脱却できなかったのが藤井教授の失敗であろうと思います。でも、まあ、専門分野ではないわけですから…

藤井教授がおっしゃるとおり、読めば正直者として暮らす日々の活力になるかも知れませんし、それは今の世の中にとって大切なことですから、それを評価して。

お勧め度:★★★☆☆(星三つ)

なぜ正直者は得をするのか―「損」と「得」のジレンマ (幻冬舎新書)なぜ正直者は得をするのか―「損」と「得」のジレンマ (幻冬舎新書)
(2009/07)
藤井 聡

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