--------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2010-01-26

先祖の因縁(5)

先祖の因縁という言葉にはマイナスのイメージが強い原因は、先祖の因縁を信じている側の理解に問題があるということについて、引き続き考えてみたいと思います。

因果応報は自分がいかに生きるかという観点から考えるべきものであるということが欠落している、先祖の「因縁」といいながら縁起説に基づいた理解がないということについて説明してきました。

次に指摘しておかなければならないことは、「善悪について(3)」以降で論じましたが、苦楽の果を生じる善悪の因は、必ずしも道徳的な善悪とは一致しないという点です。それを誤解しているために、いろいろな問題が起きる、場合によっては悲劇というべき事態まで引き起こすのです。

前世の因縁においてもそうですが、さまざまな問題で苦しんでいる人に対し、それは先祖の因縁だからしかたがない、むしろ苦しむことによって因縁が解消されるのだというような態度をとる人がいます。あるいは、かつてはそれを根拠として差別を正当化するようなこともありました(それが先祖の因縁云々に対する批判の根拠ともなっています)。

しかし、そういう態度はまったく間違っています。むしろ、本当に因果応報ということを理解していれば、そんな態度など取れるはずがないのです。なぜならば、それは自分の作る悪因縁になるからです。

例えば、サリドマイドという睡眠薬の副作用のために障害を持って生まれた方たちがいます。これは本人は何をしたというわけでもなく、妊娠中に母親がサリドマイドを配合した睡眠薬を服用したことによります。製薬会社の責任云々はさておき、直接的には母親がそういう薬を飲んだということが原因になっているわけです(飲まなければ、そういう結果にはなっていなかった)。そういう意味では、母親の薬を服用するという行為が因(直接的原因)ということになります(また、そのことで自分を責めた親も多かったのではないかと思います)。

しかし、サリドマイドを服用するという行為には、どう考えても道徳的な問題はありません。むしろ母親自身も犠牲者であるわけです。ですから苦の果をもたらした悪因であっても、そこに道徳的な善悪を問うことはできません。

もちろん、人を殺したり、ものを盗んだりという道徳的な悪という形で悪因を作ることもありますが、その場合でも、やむを得ずそうせざるをえなかったということだってあります。それでも、悪因は悪因であって、それも苦なる結果を生じます(例えば「あの子のお父さんは犯罪者だ」といって差別されるような)。

そういう苦の結果に対して、よく事情もわからないままに、先祖の(あるいは前世の)悪因の報いだといって差別するようなことが許されるでしょうか。

ですから、今、楽や苦の結果が生じており、それが先祖の善悪の因縁によるものだとしても、それが必ずしも道徳的な善悪に一致するとは限らず、むしろ同情されるべきことかも知れないわけです。

そう考えれば、先祖の因縁を根拠として苦しんでいる人に無慈悲な態度をとることが正当化できないというのは当然のことでしょう。まあ、それ以前に先祖の因縁ということからすれば、たとえそれが道徳的な意味で悪いことであっても、本人には何の責任もないわけですから、先祖の因縁の犠牲者であり、それこそ同情されてしかるべきです。

そういうようなことまできちんと考えれば、先祖の因縁を根拠に人のことをとやかく言うのは、慎重にしたほうがよいでしょう。むしろ悪因を作ることになります。

先祖の因縁の問題だけではなく、前世の因縁についても同じですが、そういったことを根拠に、現に苦しんでいる人を放置したり、差別したりするというのは、因果応報というものを深く考えていないからです。むしろ、正しく因果応報を理解しているならば、そういう無慈悲な行為が悪因となり、子孫なり来世なりに悪しき果報をもたらすと考えるはずではないでしょうか。

そういう意味で、先祖の因縁を信じている人にこそ、実は先祖の因縁・因果応報という問題を理解していないことが多いと思うわけです。特に、先祖に問題があるから懺悔しろとか、そのためにお布施をしろとか言う宗教団体など。

次回は、苦しんでいる人に対して、先祖の因縁を根拠として放置したり差別したりすることが不適切であることを、異熟因・異熟果という面から説明したいと思います。

心神(わがたましい)を傷ましむること莫れ。ありがとうございます。

↓一日一回クリックしてくださった方には、きっと何かいいことが起こると思います。
人気ブログランキングへ
スポンサーサイト

theme : 宗教
genre : 学問・文化・芸術

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

こまいぬ

Author:こまいぬ
古今宗教研究所のブログです。

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ランキングに参加しました
人気ブログランキングへ
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。